こんにちは!トリ女のマミです。
今回は「簡単な単語が1番難しい」と題して、一般的な主語である、日本語「我々(私たち)」と英語「we」の違いを理解し、駆け出し通訳者トリ女の経験をふまえて、どういうときに注意が必要なのかを学んでいきます。
同様の問題を抱える中国語もちょっとご紹介しています。
語学に興味ある方、外国語を使用してお仕事してる社会人の方などに、有益な情報になれれば幸いです。
はじめに
普段、無意識に使う「我々(私たち)」という主語。
その対訳として存在する英語の「we」。
駆け出し通訳者として働くなか、「我々(私たち)」=「we」でないことがあり、そのミスコミュニケーションがもとでトラブルになった苦い経験があります。
以下では日本語・英語の意味を確認しながら、どういう時に注意が必要か学んでいきましょう。
日本語「我々(私たち)」
日本語の「我々(私たち)」を下記架空のビジネスシーンで確認していきます。
架空のビジネスシーン:A社(日系企業)はB社(英語圏企業)に対し、売上に応じてロイヤリティを支払っている。下記会議ではA社の売上改善策を議論している。
下記で「我々(私たち)」は誰をさすでしょうか?
もちろん「我々(私たち)」=A社です。
英語「we」
それでは英語「we」をみていきます。
上記会話の続きで、B社(英語圏企業)に"we can improve sales by increasing payrolls.(直訳:我々は人件費を増やして売上改善できます)"と言われました。
この場合の「we」は誰をさすでしょうか?
コンテクスト(文脈)から分かる方もいると思いますが、「We」≠ B社です。
実はこの「we」、話し手(A社)と聞き手(B社)の両方をさします。
そして、上記のコンテクスト(文脈)に限定して言うと、B社はA社に対して「(A社が言うマーケティング強化ではなく)人件費を増やして売上改善してはいかがですか?」と提案しているのです。
なので、実質"You can improve sales by increasing payrolls.(人件費増やせば売上改善できますよ)"と同じ意味になります。
トリ女がこの「we」を初めて聞いたときは、「we」=B社だと思い、「(A社をサポートするために)B社が人件費を提供するから、そのお金で売上改善してください」という意味だと解釈し、なんて優しい協力企業なんだ!と大きな勘違いをしました。
そしてトリ女、通訳者としてだけでなく、外国人と仕事する一社会人としても、この「We」があまり好きではありません。
現職のビジネスが苦戦し、お互いの関係がやや複雑になっていることも一要因だと思いますが、実質「You」の意味で、”We can do A”、"We can do B."、"We can do C."・・・と、あれやれ、これやれ、言うわりには、AやB、Cをするために多少の協力をお願いすると「それは難しい」と即答されたり・・・全然 「We(お互い)」じゃないんですケドと思うことがあります。
また、次にご説明するトリ女の経験のように、責任(主体)が不明確になって後にトラブルになることもあります。
シチュエーション:商品サンプルをもっと早く欲しい旨サプライヤーの英語圏企業に伝える。
英語圏企業:Then, we can ask our factries to pick up samples and send them directly to Japan.
トリ女通訳:それなら、(私たちが)工場に頼んで、商品サンプルを直接日本に送ってもらいましょう。
現職:それは本当に助かります。
後日商品サンプルが一向に送られてこないので、英語圏企業担当者に連絡してみると、工場の連絡先教えるので、自分たちでサンプル交渉してほしい(商品サンプルを手配する約束はしてない)というそっけない対応されてしまいました。
サンプルありきで進めていた施策が突然ストップしてしまい、かつ急に態度を変えた(サンプル手配するって言っていたのにしなかった)担当者に腹を立てた現職は、「サプライヤーなんだから、サンプルくらいなんとか用意しろ!」と怒りのメールを送っていました(結局サンプルが送られてくることはありませんでしたが・・・)。
本件今から振り返ると、担当者が態度を変えた可能性もあるのですが、通訳者として、下記会話の「we」が意味するものを確認すれば、ミスコミュニケーションは防げたかもしれません。
英語圏企業:Then, we can ask our factries to pick up samples and send them directly to Japan.
もしこの「we」が、さきほど例に挙げた実質「you」だったら、
トリ女通訳:(皆さんが)工場に頼んで、商品サンプルを直接日本に送ってもらってはいかがですか。
と通訳しないといけないですし。
なので、「we」(主体)を明確にするために、下記のように聞き返すべきでした。
英語圏企業:Then, we can ask our factries to pick up samples and send them directly to Japan.
トリ女:Are you saying that you will take the trouble of asking your factries([あなたが]わざわざ工場に頼んでくださるんですか)?
日本人の場合、責任(主体)の所在を直接聞くことに気が引ける方も多いと思いますが、トラブルを避けるためにも、勇気を出して必ず確認しましょう。
ちょっと中国語
ちなみに中国語でも同様の問題は起きます。
日本語の「我々(私たち)」の対訳として、中国語では「咱们(zán mén)」と「我们(wǒ mén)」が存在します。
- 咱们(我们)去学校吧。(一緒に学校行こうか)
- 我们去学校。你呢?(私たち学校行くけど、あなたはどうする?)
上記のように、「咱们(zán mén)」は聞き手を必ず含む表現なので、ビジネスのコミュニケーション上あまり問題ないです。
が、「我们(wǒ mén)」は英語「we」同様、発言者だけの場合と、発言者と聞き手の両方含まれる場合があるため、ビジネス上注意が必要です。
日中通訳者永富健史氏は、2005年のシンポジウムで下記のように述べています。
※[ ]はトリ女の注釈です。
「咱们」は聞き手を含む「私たち」ですが、「我们」は聞き手を含まない場合と含む場合があります。従って、商談、協議などの場面で「我们」が出てきた時は確認する必要があります。特に契約に関する双方の責任分担、免責事項などの通訳をする場合は、「我方[こちら側 ]」、「贵方[皆さま方 ]」、「我们双方[ 我々両者]」などの表現を使い、間違いを避ける工夫をしたほうがよいと思います。相手側が「我们」と言ったので相手側のことと思っていたら、実はこちら側も含まれた意味の発言であったということもあります。このような初歩的な間違いは避けたいものです。
おわりに
今日の内容をまとめると、英語の「we」は、話し手と聞き手の両方を含み、かつ実質「you(聞き手)」の意味をもつことがあります。
ミスコミュニケーションを防ぐ目的で、責任(主体)を明確にするために、重要なビジネスシーンでは「we」の意味を必ず相手に確認しましょう。
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