こんにちは!トリ女のマミです。
今回は「簡単な英語が1番難しい」というテーマで、英語「share」の適訳を検討しながら、英語と日本語の持つニュアンスの違いについて、さらに理解を深めていきたいと思います。
はじめに
日英社内通訳になって約1年半のトリ女。
簡単な英単語であっても、状況に応じて適宜日本語を微調整する必要を感じています。
今回は中学レベルの英語「share」を例にご説明します。
「share」は「共有する」じゃダメなの?
社長(50歳前後)とアジア地域のビジネス責任者(30才前半、英語ネイティブ)とのone on one ミーティングでのこと。
比較的フランクなビジネス責任者は、20才ほど年上の社長とビジネスの難しい局面について話すときも、同僚といるかのごとく、カジュアルかつストレートな表現で応対するので、社長の口調からイライラが伝わってきていました(責任者は全く気付いていない様子)。
そんなシチュエーションでの、下記責任者の一言とトリ女の通訳。
- (責任者)" Can you share your opinion with me?"
- (トリ女)「社長のお考えを共有していただけますか?」
社長が「『共有』って・・・」と小声で不快を一瞬示したのち、何事もなく会話が続きました。
おそらく社長は、年齢も立場も異なる責任者から、「共有」という言葉によって、「対等な関係にある者同士」とみなされていることを、不快に思ったのだろうと推測します。
そしておそらく責任者は、社長と立場上対等かどうかという意識はなく、ただ社長の考えを聞くべく、よく使う表現 "Can you share~"を使用しただけなのでしょう。
こういう言葉の持つニュアンスの違い(表現の違い)は、不必要なミスコミュニケーションを回避するためにも、通訳者が日本語を微調整するしかないのかなとトリ女は考えております。
今回の件でトリ女の反省点は下記2点。
- 「share」=「共有する」という固定概念にとらわれ、柔軟に適訳を見つけられなかった(通訳に余裕がなかった)。
- 語彙力不足。英辞郎にも、「共有する」以外に「(感情などを)(人に)伝える」など、上記状況により適した訳語があった。
理想を言えば、英語「share」に引きずられず、" Can you share your opinion with me?" を聞いた瞬間、「社長の意見を聞きたい」という質問の本質を取り出し、その本質を状況に適した日本語訳にすべきでした。
なので、「社長のご意見お聞かせいただけますか?」と通訳すれば、ミスコミュニケーションは防げたのではないかと思っています。
おわりに
皆さま、いかがでしたか?
中学生レベルの簡単な単語でさえ、当時(中学時代)覚えたそのままの意味で通訳してしまうと、ミスコミュニケーションにつながることもある、という事例をご紹介しました。
皆さまのグローバルな活躍にお役立てできれば幸いです。
最後に、通訳者で教育者でもある鳥飼玖美子氏の著書『通訳者と戦後日米外交』(2007年)から、通訳の役割について氏の見解をご紹介して、本記事を終わりにしたいと思います。
村松(トリ女注:通訳者村松増美氏)がいみじくも述べたように、通訳者は黒衣ではあるが、役者の衣装の裾を「ちょっと直す」ことはある。そして、いつ、どのように裾を直すのかを決めるのは、通訳者自身である。
(『通訳者と戦後日米外交』p369)
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