こんにちは!トリ女のマミです。
今回は「第5回日本通訳フォーラム参加してみた」と題して、初めて参加した「日本通訳フォーラム 2019」(2019年8月24日開催)について感想などをお伝えします。
日本通訳フォーラムに興味のある方にとって、有益な情報になれれば幸いです。
- はじめに(日本通訳フォーラムとは)
- 新崎隆子氏「通訳者のキャリアプロセス:豊かな人生のために」
- 小松達也先生のお言葉
- 若宮道子氏「『M』のマークの舞台裏~巨大ハンバーガー・チェーン社内通訳の魅力を語る」
- 第5回日本通訳フォーラム感想(JACIへの提案)
- おわりに
はじめに(日本通訳フォーラムとは)
年1回開催されるJACI(日本会議通訳者協会)による、通訳者のためのフォーラム。
目的は「日本通訳フォーラムは現役の通訳者や志望者、関係者に学びの機会を提供するとともに、通訳の諸問題について対話を深めていくこと」で、2019年は「外食産業からサブカルまで幅広い専門分野の通訳者や専門家」による講義が行われた(出典:JACI公式HP)。
場所は、最寄り駅「三軒茶屋駅」の昭和女子大学(2018年・2019年)。
2019年は昭和女子大学8号館で開催されたのだが、キャンパスが広いうえに、8号館入り口がやや奥まったところにある。
トリ女含めて道に迷っていた参加者がいたので、下記に経路写真を添付した(出典:第5回日本通訳フォーラム 2019 のパンフレット)。
来年も昭和女子大学8号館で開催する場合、活用していただきたい。
大まかなスケジュールは下記の通りで、
- 午前:基調講演+特別功労賞表彰式
- 午後:講義(1時間)×4コマ
午後の講義は3つの中から1コマずつ選択する(下記は2019年の講義スケジュール)。
JACI会員だと、参加できなかった講義をFacebookで見られる特典を享受できる。
これらすべての講義を受講すると、9:30~18:00と丸1日通訳漬けになるのが、この日本通訳フォーラムの特徴である(希望者は夕方からの懇親会もあり)。
参加料は下記の通りで、
- JACI会員:6,000円
- 一般(非JACI会員):9,800円
初参加の「一般(非JACI会員)」にとって約1万円の参加料は、ややハードル高い気もするが(若手の通訳志望者にとってはなおさらである)、この料金を高い/リーズナブルと考えるかは、受講した講義によると思われる(理由はあとで記載する)。
ちなみに、非JACI会員で日本通訳フォーラム初参加の方は、7月にJACI会員になったあと、上記JACI会員チケットを購入することを下記理由でおススメする。
非JACI会員と同額9,800円で、JACI会員特典である、参加できなかった講義の録画映像を後日Facebookで見れるためである。
JACI会員の会費は年間5,000円で(4月~翌年3月まで)、7月に入会すると会費が3,800円になる。
JACI会員になった後に、JACI会員チケット購入すると、計9,800円(3,800円+6,000円=9,800円)支払うことになり、非JACI会員と同額費用でJACI会員特典を授与できる。
このお試し入会(?)で、参加できなかった講義をすべて見て、有料ブログが読めるなどの会員特典を最大限活用したあと、来年4月にJACI会員を継続するか各自で判断いただきたい。
以上が日本通訳フォーラムの基本情報である。
以下では、フォーラムの中でも特に良かった講義を少しご紹介するとともに、次回のフォーラムに向けて、トリ女の感想(提案)を述べる。
ここで1点注意事項。
講義によって、写真撮影・録画、講義内容やその要約のブログ掲載を禁止する注意喚起が事前にあるため(そのような注意喚起ない講義や、逆に写真撮影OKとする講義もあり、その違いはよく分からなかった・・・)、講義内容の紹介は非常に限定的になること、ご了承いただきたい。
それでも講義内容を多少なりともご紹介するのは、より多くの方(特に若手)に日本通訳フォーラムに興味を持っていただきたいと思っているからである。
正直に言うと、日本会議通訳協会による日本通訳フォーラムの紹介だけでは、特に若手の通訳者(ないし通訳志望者)で非JACI会員の方が、1万円かけて、貴重な休日を終日使って参加するほどの内容を提供しているのか判断しにくい。
「スゴイ通訳者の方々が集まって講義してくれるんだから、イイ講義内容に決まっている」というご意見もあると思うが、その講義が聞き手にとって有益かどうかは、講義する方が通訳者としてスゴイのも一要素だが、その講義内容と質にもよる。
そういう経緯もあり、今回は通訳志望者または若手の駆け出し通訳者目線で、日本通訳フォーラムをお伝えしていく。
多少辛口になることもあるかもしれないが、日本通訳フォーラムをさらに良くしていただきたいという期待からであって、主催団体や通訳フォーラムを非難する意図ではないこと、ご理解いただけると幸いである。
新崎隆子氏「通訳者のキャリアプロセス:豊かな人生のために」
第5回日本通訳フォーラム参加者のボリュームゾーンは40~50代で、アラサー&駆け出し通訳者のトリ女より、年齢的にもキャリア的にも成熟したオトナーな女性が多く出席。
午前のスケジュールは下記の通りで、
- 基調講演:新崎隆子氏「通訳者のキャリアプロセス:豊かな人生のために」
- 特別功労賞授賞式(第2回受賞者:小松達也氏)
通訳者であり大学でも教鞭をとられる新崎氏の基調講演から始まった。
内容はおおまかに言うと下記3点で、
- 通訳者へのアンケート結果紹介
- 通訳者になるパターン紹介(新崎氏自身の通訳者キャリア紹介あり)
- 「通訳」が専門職として認められるために必要なこと
駆け出し通訳者・トリ女にとって特に興味深かったのは「1.通訳者へのアンケート結果紹介」。
2017年に実施した約200名の通訳者を対象としたアンケート結果をもとに、通訳者になるきっかけからお財布事情、通訳者になってから経済的に自立できるようになるまでの期間など、通訳者の経済的・精神的な満足度を分析。
アンケートの結論自体は「帰国子女や海外経験は必須条件ではないが有利」、「経済的自立には居住地によりかなりの差がある」、「スキルレベルの上昇とともに収入も多くなる」等さほど意外ではなかったものの、それを根拠づけるアンケート結果が大変興味深かった。
小松達也先生のお言葉
つぎに、特別功労賞授賞式で小松達也氏からのお言葉を頂いた。
小松氏の受賞スピーチ内容は、学生時代の通訳初体験、誤訳エピソード、通訳の魅力など、下記記事でも書いた著書『通訳の英語』と内容が重なっていたが、
それでも小松氏から直接お話きけるのは、通訳者のはしくれとして感慨深かった。
下記はスピーチのメインからはずれるが、皆さまと共有したい小松氏の発言。
- (ICUや立教出身の通訳者が多いため)母校東外大の通訳者が少ないのはなぜ?
- 通訳の機械化はない
- 小松氏の紹介で、西山千氏はNHKのアポロ月面着陸の同時通訳を担当した
機械翻訳技術の発展めざましい中、氏が「通訳の機械化はない」と優しく言い切った点は意外。
若宮道子氏「『M』のマークの舞台裏~巨大ハンバーガー・チェーン社内通訳の魅力を語る」
午後は、同時間帯に実施される3つの講義から1つを選ぶ選択形式で受講。
1コマ目は、現在(2019年8月)日本マクドナルドでCEOカサノバ氏の専属通訳を務める若宮氏による、下記内容の講義を選択。
- 現職に至るまでのキャリア
- 日本マクドナルドでの社内通訳
- 社内通訳者志望の方へメッセージ
実は通訳歴6年とキャリアとしてさほど長くないにもかかわらず、氏は日本マクドナルドのCEOカサノバ氏の専属通訳に就任(社内通訳10名の中からCEOの専属通訳に選出)。
質疑応答でその秘訣を聞かれると「付き人的な役割」や「先を読む判断」が必要と回答し、氏は通訳以外のスキルで評価されたと感じているようだった。
また、感動を与えられる通訳者を目指されているとのことで、通訳することにいっぱいいっぱいの駆け出し通訳者・トリ女との大きなレベル差を感じた。
講義最後には、参加者全員マックフライポテトSの無料券を頂く。
第5回日本通訳フォーラム感想(JACIへの提案)
今回初参加だったが、下記理由で参加してよかった。
- 小松達也氏のナマの声が聴けた
- 企業の最前線で活躍される通訳者から直接お話がきけた
- 通訳者全般の事情(お財布事情から非英語の通訳者の状況、ママ通訳者など)をかいつまんで知ることができた
特に現職で初めて社内通訳者になり、それも社内で一人の通訳者のトリ女にとって、日本通訳フォーラムは、実際に活躍しているベテラン通訳者のお話をきけるまたとない機会で、大変良い刺激をうけた。
また、トリ女(トリリンガル女子)を名乗っていることもあり、将来中国語も使ってキャリアを形成したいトリ女にとって、英語だけでなく、他言語の通訳者事情も知ることができ、大変勉強になった。
とは言いつつも、「はじめに」で提起した「特に若手の通訳者(ないし通訳志望者)で非JACI会員の方が、1万円かけて、貴重な休日を終日使って参加するほどの内容を提供しているのか」という問いに、はっきり「YES!」とも答えにくいところも。
その要因の一つは、参加者のボリュームゾーンが40~50代のため、講義内容によっては中堅~ベテラン通訳者向けの内容だったりする。
当日頂くパンフレットには、講演者の経歴紹介はあるが、講義概要の記載ないため(日本通訳フォーラム2019紹介ページに記載あるが、全員の紹介文を読み込むのも大変なので、箇条書き3つ程度にまとめていただけると大変助かる)、講義のテーマと期待した内容がやや離れていた場合もある。
また、テーマが類似している講義があり(子育て+通訳業、非英語の通訳者事情)、講義内容がどう違うのか分からないと選択がなかなか難しい。
次回以降は、講義の対象者(通訳志望~ベテラン通訳まで)と講義概要を記載いただけると、そういったミスマッチが緩和されると思う。
また、とある講義が「通訳に関する参加者からの質問になんでも答える」というものであることが、講義開始5分前に突然判明(日本通訳フォーラム2019紹介ページにも記載なし)。
この講義形式なら、参加者から事前に質問を受けつけ、当日ある程度準備した回答をしていただく方が、参加者がより有益な情報を得られると思う。
というのも、「通訳に関する質問何でも」という超オープンクエスチョンのため、具体的なお給与事情や仕事依頼主からのハラスメント対処法、通訳スキルが落ちてきた通訳者についてなど、結構センシティブな質問が多くあがった。
が、Facebook用に録画されているためか、想定外の質問だったためか、あまり遭遇したことない事態の質問だったためか、ごくごく一般的な解答しか得られないこともあり、やや消化不良気味に。
再度感想をまとめると、初めて参加したトリ女にとって、通訳フォーラム2019は大変刺激を受けた良い機会になったものの、選択する講義内容によってはミスマッチが発生する。
若手の通訳者(あるいは通訳志望者)を対象とした講義が1つくらいあっても面白いかもしれない。
下記にJACIへの提案をまとめた。
- 講義対象者+講義概要をパンプレットに記載いただきたい
- 参加者からの質問で講義を進行する場合は、事前に質問を募っていただきたい
来年の第6回日本通訳フォーラムに期待したい。
おわりに
同時通訳デビューする通訳者が基調講演を通訳したり、日本会議通訳協会の理事をつとめる関根マイク氏が司会をされていたりと、日本通訳フォーラムはアットフォームで温かい雰囲気で包まれていました。
お昼休みに、下記ランチ場所マップを用意していただけるところとか、
さすが気遣いに長けた女性多い業界だなーとほっこりしました(もし関根マイクさんの提案だったらすみません)。
が、地図が読めないトリ女は、駅近くの何年ぶりかのコメダ珈琲でひと休み。
通訳フォーラム主催者、講演者、司会などお手伝いされていた皆さま、本当にお疲れさまでした。
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